雨上がりは空気中の塵やごみが洗い流されて星が綺麗に見えるんだって。
へえ・・・。
どうでもいいって顔しないでよ、。
些細なことで、基央と喧嘩をした。
発端なんかもう覚えていない。
覚えているのは、空は雨模様でそれにもかかわらず傘もなしに基央の部屋を飛び出してきたこと。
いつもは穏やかな基央の剣幕に驚いてだったのか、彼の冷たい視線だったのか。
土砂降りの雨の中を走って、自分の部屋まで辿り着いた。
鍵を開けて電気もつけずに部屋の隅にうずくまった。
何度か、あたしの携帯が震えた。
基央からだと分かっていた。
出ることも出来ずに、寂しい光を放つそれを放り投げた。
自然と、涙が零れてきた。
悲しくて、寂しかった。
あんな表情、初めて見た。
だから余計に悲しかったんだ。
「ごめん・・・基央」
「ばか」
数分たったのか、数十分たったのか。
時間の感覚が麻痺してしまった頃、突然自分の名前が呼ばれる心地がした。
一瞬、気のせいだと考えた。
基央がいるわけがない。
あたしは相変わらずうずくまる体勢をとっていた。
「おい、ばか」
すると、再び声がした。
「え・・・?」
「何考えてんだよ・・・ばか」
「もと・・・お?」
突然、視界が塞がった。
気が付けばあたしは基央の腕の中だった。
「いなくなんなよ・・・」
基央の体温がじわりと伝わった。
基央も雨の中を走ってきたのだろうか。
洋服は湿っていて、あたしの体温と殆ど変わりなかった。
「ごめ・・・」
「ごめん、」
基央がそっと腕を緩めてあたしを真っ直ぐに見た。
暗くてどんな表情かはよく分からなかったけれど、声はあのときの剣幕とは違っていた。
いつもの、暖かい声。
みんなが愛してる基央の声だ。
「泣くなって・・・もう、いいから」
「でも・・・あたし」
「俺が悪かった・・・愛してるよ」
「うん・・・」
泣くな、なんて無理だ。
それを分かってくれたのか、基央は苦笑いを返した。
「ね・・・基央」
「うん・・・?」
「基央・・・前さ、雨上がりは星が綺麗だって教えてくれたよね」
「ああ・・・そうだったっけ」
「もう・・・どうでもいいって顔しないでよ」
「ごめんごめん、言った」
「あれ、嘘じゃなかったんだ」
「嘘じゃないけど・・・今日は理由がちょっと違うんじゃねえ?」
「え、そうなの?」
「のレンズが綺麗になったんでしょ」
今夜は星が綺麗だ
0205.
>