決意表明
「ヒロ〜?」
「んー・・・」
あぁ、もう。
ヒロの馬鹿。
折角『休みになったからうちに来ない?』って誘ってくれたのに。
何だこの有様は。
「・・・増川弘明の馬鹿」
「・・・」
「あほ・・・」
「・・・」
ヒロは一向にこっちを振り向こうとしない。
何をしているのかと言ったら、漫画を読んでいる。
大好きな漫画の最新刊が出たらしく、それに夢中になっている。
「もう・・・」
もう、知らない!!
てか、信じらんない!!
私は立ち上がった。
「・・・こんちきしょうめ」
きっと、今この部屋を出ても気づかないだろう。
ヒロを困らせてやるんだ。
私は静かに部屋を出た。
ヒロの家を出て30分が経過した。
私はヒロの家の近くにある公園に来た。
だけど、携帯電話は鳴ろうとしないし、迎えにも来てくれない。
「・・・帰ろうかな」
やっぱり、疲れてるんだよね。
何てったって、あのバンプオブチキンのギタリストだ。
私は諦めて帰ろうとした。
すると。
「ー!!!!おーい!!」
誰かがこちらに走ってきた。
否、それが誰かは声で分かったのだが。
「ヒロ・・・?」
「っ・・・ごめんな?」
ヒロは肩で息をしながら言った。
「気がついたらがいなくて・・・」
「気づくの遅いよ・・・」
「ごめん・・・」
「私より漫画が好き・・・?」
「・・・そんなことないよ」
「だったら・・・どうして迎えに来てくれないの?」
「だから・・・」
「言い訳なんて聞きたくないよ・・・つらいよ、ヒロといるの」
「俺は・・・」
「もう、いいよ・・・」
「俺は、がいてくれれば、それでよかったんだ」
「え・・・?」
「だから・・・ごめん」
「・・・」
「俺は・・・が一番好きだから」
「・・・ヒロ」
「帰ろう?俺んちに」
ヒロは手を握った。
だけど、握られた手の中には、違う感触があった。
ヒロは微笑んで手を離した。
違う感触は、私の手の中にあった。
「・・・なにこれ」
小さな袋がひとつ。
綺麗にラッピングがしてある。
「・・・お詫びの印」
袋を開けると、そこには小さな指輪。
女の子が一度は憧れるであろう、特別な指輪。
「・・・ヒロ、もしかして」
「・・・俺――――」
その言葉の続きは、ヒロの決意表明であった。
0715.